【吹奏楽とファゴット(6)】ファゴット不在の合奏に参加して感じたファゴットの効果
ファゴット吹きが「ファゴットが居ない合奏」に参加して感じた事について書きます。
・中音グループイメージ
はじめに
私がファゴットを吹いている事もあり、「ファゴットが居ない合奏」を体感することは基本的にはありません。ですがある時コントラファゴットで参加してファゴットが不在というパターンを経験し、ファゴットの効果について感じることがありました。
A.リードの「エルカミーノレアル」の練習をした時のことですが、私はオプションのコントラファゴットを吹き、ファゴットの人が欠席という状況でした。この曲は何度も演奏した経験があり演奏も耳も慣れています。
※A.リードの曲はファゴットを比較的主体的に効果的に使ってくれる印象がある作曲家の1つで、ファゴット吹きにとっても存在意義や効果を感じられて演奏感覚が楽しいです。
ファゴットは主に低音セクション、中音セクション、オケ木管セクションの3つの役割りがありますが、ここでは特に中音セクションの部分について感じることがありました。
実体験
エルカミでユーフォニアム、テナーサックス、ファゴットが一緒に演奏する部分で、いつもと違ってファゴットが抜けた音を聴いていて思いました。
→響きが太くてこもった音色であいまいな音に感じる。ここにファゴットが加わればもっと音の輪郭と芯が明瞭になって歯切れが良くなるはず。
ファゴット自身も豊かな響きを持つ楽器で柔らかくて客観的な音ではありますが、ユーフォニアムやテナーサックスの方が物理的により太さを持っているため、相対的に細い芯や輪郭になる成分が足りていないように感じました。
このように普段聞き慣れている演奏イメージから「穴」を感じました。これは低音セクションでも同様のことが言えると思います。
・中音グループイメージ
つまりファゴットが物理的に音量が小さいからそれらに埋もれてしまいという感じではなく、「他の楽器が持っていない成分」をファゴットで補うことができる、というように感じました。
また中間部のオーボエのソロの裏のファゴットがなくて寂しいのは言うまでもありません。おそらく3rdクラリネットが同じ動きだと思いますが、他のクラリネットと調和するし単独の声部としての存在感は薄いです。特に静かな場面ではファゴットは存在感が大きいです。
このように吹奏楽のサウンドの中でファゴットの成分の存在意義を感じることができました。
考察
一般的なイメージと照らし合わせて考察しました。
・ファゴットは埋もれる?
時にはユーフォニアムやテナーサックス等によってファゴットがかき消されるとか完全に埋もれてしまうような感覚は確かにありますが、それは全体が大音量の時の場合であり、常にという訳ではありません。
もちろん練習場所、演奏する曲、編成バランスによってはその効果の感じやすさは変わってきます。音がすぐに飽和状態になる場所もあるし、ファゴットがやたら響く場所もあります。
前述の実感もあるので、ファゴットが聞こえにくいというイメージに捉われず、常にファゴットらしい音でしっかり演奏することで全体的に効果が高まるはずです。
・他の楽器と音が被ってるから意味がない?
そんなことはありません。軽音楽では1つ1つの音がソリッドでソロ的ですが、吹奏楽は様々な楽器を組み合わせて豊かなサウンドを作るジャンルです。個々の主張競争でもないし、それぞれの成分のブレンドが必要なのです。
前述のユーフォニアム、テナーサックスともブレンドさせて中音域の1つの声部を作る意識が大事です。低音セクションも同様で、バスクラリネットとの一体化を中心に、ファゴットらしい芯や響きをブレンドさせます。
間違いなくファゴットは吹奏楽のサウンドに成分を付加することができます。あまりかき消されるイメージにとらわれずに油断せずに、意志のある音で存在感を出してサウンド作りに参加した方が楽しいです。
おわりに
ファゴット不在の合奏を客観的に体感して、ファゴットがいるといないとでは吹奏楽のサウンドは間違いなく変わると改めて実感しました。吹奏楽の1つの色、音の成分としてサウンドをより多彩にします。
音量が小さいイメージに捉われずに、ぜひそんなファゴットの効果を知って有効活用されてほしいです。自分自身もファゴットを客観的に知る良い勉強になりました。
・ファゴットのイメージ